インボイス対策として法人設立のご依頼が増えてきました。
個人事業主のお客様が法人化を検討するきっかけになっているようです。
その中でも必ず質問をお受けする設立に必要な費用についてまとめたいと思います。
今回は一番ご相談が多い株式会社について言及していきます。
目次
株式会社とは、株主に株式を買ってもらうことで資金を集め、その資金を用いて事業を行う会社のことをいいます。株式会社の意思決定は株主総会によって行われ、会社の経営者は取締役、会社の代表者は代表取締役となります。
法人化(法人成り)とは、個人事業主として事業を行っている者が会社を設立し、個人事業主の事業を引き継ぐことをいいます。
株式会社を設立するには、会社の概要を決定し、その内容に沿った定款を作成して、公証人の認証を受け、出資金を払い込んだ後に、法務局で登記申請を行います。
定款とは、法人の目的、組織、活動に関する根本となる基本的な規則です。
株式会社を設立するには、定款を作成し、発起人全員がこれに署名し、又は記名押印しなければなりません。
定款の記載事項には、法律上必ず記載しないと定款が無効となる「絶対的記載事項」、定款に記載しないと効力が生じない「相対的記載事項」、記載するかしないか当事者に任されているもの「任意的記載事項」があります。
絶対的記載事項とは、会社法上必ず記載しなければならない事項をいいます。
・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
・発起人の氏名又は名称及び住所
※会社が発行する株式の総数(発行可能株式総数)は、定款作成時に定める必要はなく、設立登記申請時までに定款に定めればよいことになっています。
相対的記載事項とは、会社法の規定により定款に定めがなければその効力を生じない事項をいいます。
■変態設立事項(会社法第28条により定款の定めが必要とされる事項)
金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数
株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名又は名称
株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名又は名称
株式会社の負担する設立に関する費用
■上記以外
・株式の譲渡制限
・取締役会、監査役等を置くことができる旨
・存続期間又は解散の事由
・公告方法 等
任意的記載事項とは、定款の記載事項のうち、絶対的記載事項及び相対的記載事項以外の事項で会社法の規定に違反しないものをいいます。
任意的記載事項としては、例えば次の事項に関する規定があります。
■株式について
株主名簿の基準日
株主名簿の名義書換手続
株券の再発行手続
■株主総会について
定時株主総会の招集時期
株主総会の議長
議決権の代理行使
■株主総会以外の機関について
取締役、監査役、執行役の員数
代表取締役、役付取締役(会長、社長、副社長、専務取締役、常務取締役等)
取締役会の招集権者
■計算について
事業年度
■公告について
公告の方法
作成した定款は、本店の所在地を管轄する法務局又は地方法務局所属の公証人の認証を受ける必要があります。
定款の認証とは、公証人が定款が作成されたことを証明することをいいます。
設立当初の定款のみ、公証人の認証が必要とされる理由については「発起人が原始定款を作成したこと」、「その内容の明確性を確保し、後日紛争になったときにその内容を確実に証明し、不正行為を防止すること」にあります。
定款の認証は、会社の本店の所在地を管轄する法務局又は地方法務局に所属する公証人しかできません。
定款認証の嘱託には、定款(原本)2通を公証人に提出します。
公証人が認証をした上、このうち1通は役場保存用原本として保存し、もう1通を会社保存用原本として嘱託人に還付されます。
設立登記の申請の際にも、認証を得た謄本1通が必要となるため、通常は定款3通を提出することになります。
他にも、発起人の印鑑登録証明書などが必要です。
法人成立の時に実質的支配者となるべき者について、その氏名、住居及び生年月日等と、その者が暴力団員及び国際テロリスト(暴力団員等)に該当するか否かを公証人に申告する制度です。平成30年11月30日から改正されました。
実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある個人をいい、具体的には、「犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則11条2項」で定義されています。
株式会社では、①株式の50%を超える株式を保有する個人、そのような者がいない場合には、②25%を超える株式を保有する個人、そのような者もいない場合には、③事業活動に支配的な影響力を有する個人、そのような者もいない場合には、④代表取締役が該当します。
この申告は、定款認証の嘱託までに行う必要があります。
暴力団員等に該当する者が実質的支配者であり、その法人の設立行為に違法性があると認められる場合には、公証人は認証することができません。
会社法
第34条 発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることを妨げない。
2 前項の規定による払込みは、発起人が定めた銀行等(銀行(銀行法(昭和56年法律第59号)第2条第1項に規定する銀行をいう。第703条第1号において同じ。)、信託会社(信託業法(平成16年法律第154号)第2条第2項に規定する信託会社をいう。以下同じ。)その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の払込みの取扱いの場所においてしなければならない。
出資額は資本金の額です。
出資の履行とは発起人が定めた通帳への出資金の入金又は振込をいいます。
出資の証明として、設立登記申請時に法務局へ通帳のコピーを提出します。
発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく設立時取締役を選任しなければなりません。
※設立しようとする株式会社が監査役設置会社である場合には、設立時監査役を選任しなければなりません。
※設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である場合には、設立時取締役は3人以上でなければなりません。
設立時取締役等の選任は、発起人の議決権の過半数をもって決定することとなりますが、定款で設立時取締役等を定めた場合は、出資が完了した時にそれぞれ選任されたものとみなされます。
設立時取締役は、設立しようとする株式会社が取締役会設置会社である場合には、設立時取締役の中から設立時代表取締役を選定しなければなりません。
この場合には、設立時取締役の過半数をもって決定することとなります。
他にも次の方法も許容されると解されています。
(ア) 定款に設立時代表取締役の氏名を直接記載する方法
(イ) 定款に発起人の互選による旨の規定を置き、発起人が互選する方法
(ウ) 定款に設立時取締役の互選による旨の規定を置き、設立時取締役が互選する方法
取締役会を設置していない場合には、次の方法によることができると解されています。
(ア) 発起人の互選による方法
(イ) 定款に設立時代表取締役の氏名を直接記載する方法
(ウ) 定款に発起人の互選による旨の規定を置き、発起人が互選する方法
(エ) 定款に設立時取締役の互選による旨の規定を置き、設立時取締役が互選する方法
なお,上記の方法による選定がされない場合は、設立時取締役全員が設立時代表取締役となります。
株式会社の設立登記は、本店の所在地において、設立時取締役等の調査が終了した日又は発起人が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければなりません。
株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します。
登記は、書面又はオンラインにより申請することができます。
書面申請の場合には、申請人の代表者又は代理人が登記申請書を作成し、所定の書面を添付の上、株式会社の本店の所在地を管轄する登記所に提出します。
株式会社の設立の登記においては、会社法第911条第3項に基づき次に掲げる事項を登記しなければなりません。
(1) 目的
(2) 商号
(3) 本店及び支店の所在場所
(4) 資本金の額
(5) 発行可能株式総数
(6) 発行する株式の内容
(7) 発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数
(8) 取締役の氏名
(9) 代表取締役の氏名及び住所
(10) 取締役会設置会社であるときは、その旨
(11) 監査役設置会社であるときは、その旨及び監査役の氏名
(12) 公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め 等
設立に必要な費用は大きく分けて、法定費用・資本金・その他の費用となります。
定款認証の費用は公証役場へ支払います。資本金の金額によって手数料が異なります。
・資本金100万円未満:3万円
・資本金100万~300万円未満:4万円
・資本金300万円以上:5万円
設立登記を申請する用の定款の謄本手数料です。
枚数にもよりますが、1枚250円でおおむね8枚2000円と考えておきましょう。
特定文書にかかる印紙税として公証役場で収入印紙代が4万円発生します。
ただし、この収入印紙は書面で定款を作成した場合のみ必要な費用です。
電子定款であればこの収入印紙代の4万円は不要となります。
当事務所では電子定款を採用しておりますので、この収入印紙代4万円はかかりません。
登記の申請をする際に法務局へ支払います。
株式会社の設立登記の登録免許税額は、資本金の額に1000分の7を乗じた金額です。
ただし、これによって計算した額が15万円に満たないときは、申請件数1件につき15万円と定められています。
登録免許税が15万円を超えるのは資本金が約2,145万円以上の時になるので中小企業の多くは15万円となります。
株式会社を設立するには出資が必要ですが、設立時の出資額規制は設けられておらず、資本金は1円~でも株式会社の設立が可能となりました。
ただし、1円での設立はあまりお勧めできず、初期投資額に加えて3ヵ月から6ヵ月分の運転資金を見込んで設定するのが目安とされています。
上記で記載した法定手数料や資本金以外にも以下の費用が必要です。
電磁的記録の保存(300円)、実印の作成費用(約3,000円~)、印鑑証明書(1枚300円)、登記事項証明書(1枚500円)など
設立を行政書士や司法書士に依頼する場合は、別途行政書士や司法書士の報酬が必要となります。
当事務所では税抜き80,000円~でサポートしております。
先にも述べた通り、会社・法人は設立の登記をすることによって成立します。
そのため、会社の設立年月日は、法務局が設立登記申請を受け付けた日になります。
例えば、登記所が株式会社の設立登記申請書を「令和2年7月1日」に受け付けたときは、当該株式会社の設立年月日は「令和2年7月1日」として登記されます。
株式会社設立に必要な費用をまとめました。
資本金が100万円の場合、法定手数料は合計18万円程度必要です。
そこに必要な費用がプラスされていきます。
当事務所でもお忙しい事業者様に代わって、法人設立のサポートを行っております。
登記は提携する司法書士又は弁護士法人が行っておりますので安心してご依頼くださいませ。
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