【建設業】専任技術者交代の手続きを解説!申請代行

建設業許可の要件をおさらい

建設業許可は以下の要件を全て満たす場合に取得可能です。

★常勤役員等(経営業務の管理責任者)がいること
★専任の技術者がいること(資格・実務経験等を有する技術者の配置)
■社会保険等(健康保険・厚生年金保険・雇用保険)に加入していること
※許可申請者は、雇用保険、健康保険、厚生年金保険に加入していることを要します。
※事業所の形態等により、社会保険等が適用除外となる場合もあります。
■財産的基礎・金銭的信用を有すること(財産的要件)
■欠格要件等に該当しないこと
■建設業の営業を行う事務所を有すること

建設業許可を取得するには大きく分けて「人、モノ、お金」の要件をすべて満たす必要があります。
建設業許可はこのうちの「人」の部分に重きをおく許可と言えます。
この「人」の要件を満たすことが建設業許可取得の際の一番のハードルになります。

「人」の要件とは

「人」の要件とは、上記★で示した経営業務の管理責任者を置くことと、専任技術者がいることです。
本記事では専任技術者とは?という解説から、専任技術者の交代の手続きについて解説します。

経営業務の管理責任者については以下の記事で解説しております。

専任技術者とは

建設工事に関する請負契約の適正な締結、履行を確保するためには、許可を受けようとする建設業に係る建設工事についての専門的知識が必要になります。
見積、入札、請負契約締結等の建設業に関する営業は各営業所で行われることから、営業所ごとに許可を受けようとする建設業に関して、一定の資格または経験を有した者を設置することが必要です。
上記の者を「専任技術者」と呼びます。

専任技術者とは、簡単に言えば「技術者としての知識や経験を有しており、営業所に専属で常勤として従事している者」です。
そのため、他の営業所や他の仕事との掛け持ちは認められません。あくまでも営業所の専属で常勤している必要があります。

専任とは?

その営業所に常勤して専らその職務に従事することを要する者をいいます。
会社の社員の場合、その者の勤務状況、給与の支払状況、その者に対する人事権の状況等により「専任」かどうかの判断が行われます。

専任とは認められない例

・ 住所が勤務する営業所の所在地から著しく遠距離にあり、常識上通勤不可能な場合
・ 他の営業所で専任技術者になっている場合
・ 建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引士等他の法令により特定の事務所等において専任を要することとされている場合
・ 他に個人営業を行っている者
・ 他の法人の常勤役員である者等他の営業等について専任に近い状態にあると認められる者
・ 給与の額が最低賃金法に基づく大阪府の地域別最低賃金(月額 10 万円を目安額)を下回る者

専任技術者になれる者(一般建設業)

学歴+実務経験

指定学科修了者で高卒後5年以上若しくは大卒後3年以上の実務の経験を有する者

許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、高校卒業後5年以上若しくは大学卒業後3年以上の実務経験を有し、かつ、それぞれ在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者

指定学科修了者で専門学校卒業後5年以上実務の経験を有する者又は専門学校卒業後3年以上実務の経験を有する者で専門士若しくは高度専門士を称する者

・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後5年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者

・許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関して、専門学校後3年以上の実務経験を有し、かつ、在学中に許可を受けようとする建設業に係る建設工事ごとに指定された学科(指定学科)を修めている者のうち、専門士又は高度専門士を称する者

指定の学科とは、法令で定められています。具体的には15の業種の区分に応じて次の学科が指定されています。

指定学科一覧はこちら

実務経験10年

許可を受けようとする業種に係る建設工事に関し10年以上の実務の経験を有する者は専任技術者になることができます。

「実務の経験」とは、建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいいます。雑務のみの経験年数は含まれません。建設工事の発注にあたって設計技術者として設計に従事し、又は現場監督技術者として監督に従事した経験、土工及びその見習いに従事した経験等も含めて取り扱われます。

10年の実務の経験の期間は、当該建設工事に係る経験期間を積み上げ合計して得た期間とし、複数の業種を証明することはできませんので注意が必要です。

経験期間が重複しているものであっても原則として二重に計算されません。
ただし、平成 28 年 5 月 31 日までにとび・土工工事業許可で請け負った解体工事についての実務の経験の期間については、とび・土工工事業と解体工事業両方の実務の経験として二重に計算できるとされています。

実務経験が確認できる書類

10年の実務経験は、書類で明確に証明しないといけません。証明できない期間は積み上げができません。
具体的には工期・工事名・工事内容・請負金額がわかる申請業種の工事契約書や注文書、請求書、工事請負書などで証明します。
証明が必要な期間分すべての資料の原本が必要です。

経験期間の在籍が確認できる書類

・ (年金の)被保険者記録照会回答票
・ 雇用保険被保険者証(申請時点において継続して雇用されている場合)
・ 雇用保険被保険者離職票(申請時点において離職している場合)
・ 証明者が個人事業主の場合、証明者の所得税の確定申告書のうち、税務署の受付印のある第一表+専従者給与欄又は給与支払者欄に内訳・氏名の記載がある書類
・ 証明者の印鑑証明書

※証明者と申請者が同一の場合又は過去に建設業者から証明を受けている場合は原則不要とされています。

必要な資格を有する者(国家資格者)

許可を受けようとする業種に関し、指定された国家資格を有している者は専任技術者になることができます。
経験で専任技術者になるためには、それを証明する書類が10年分必要となり、ハードルが上がります。
そのため、資格で専任技術者になることが最も簡単な方法と言えます。

営業所専任技術者となり得る国家資格等一覧はこちら

よくある質問1
施工管理技士の合格証書の原本を紛失し、写しもないケースはどうするか?

合格証書の写しがある場合は、写しの添付のみで原本の提示の必要はありません。
合格証書の写しもない場合は、再発行申請書(受付印のあるもの)を添付して、申請及び届出を行うことが可能です。
この場合、後日新たな合格証書が届き次第写しを提出する必要があります。

よくある質問2
出向社員でも専任技術者になれるか?

出向社員でも、出向先での常勤性が認められれば、専任技術者になることができます。
他社からの出向社員の常勤性を確認するための資料として、申請・届出時に次の(1)と(2)を持参する必要があります。

(1)出向元と出向先との間で締結された「出向協定書」「出向契約書」のいずれかと「出向辞令」
(2)次のうちいずれか1組
ア 社会保険被保険者証+社会保険被保険者標準報酬決定通知書
イ 住民税特別徴収税額通知書(特別徴収義務者用)+府民税・住民税特別徴収税額通知書(納税義務者用)

※住民登録の住所と実際の居所が異なる場合や遠距離通勤の場合には、別途書類以下のを提示する必要があります。
・居所から営業所までの6ヵ月以上分の通勤定期
・居所の公共料金の領収書等

専任技術者の交代

現在登録している専任技術者の退職に伴い、新しく人を雇用する場合を例に挙げて解説します。

注意点

この場合に注意しないといけない点は、「1日でも専任技術者がいない日を作ってはいけない」ということです。

例えば、6/29に前任の専任技術者が退職し、7/1に後任が入社する場合、6/30は専任技術者不在になってしまいます。
先にも述べましたが1日でも不在の日がある場合は、NGとなります。

大阪府で、前任の専任技術者が4/30まで、後任の専任技術者が5/1からといった届出をした際に、「前任は4/30の23:59分まで専任技術者で後任は5/1の0:00から専任技術者なのですか?」といった指摘を受けたことがあります。
上記のような主張も通らないことはありませんが、1日は日付を被せて届出を行う方がスムーズです。

変更に必要な書類

大阪府の場合、下記が必要な書類です。

変更届の表紙(大阪府用、届出者用)

変更届出書(第一面)(省令様式第 22 号の2)

専任技術者一覧表(省令様式第1号別紙4)

専任技術者証明書(新規・変更) (省令様式第8号)

※今回の場合、専任技術者証明書は前任者の削除と後任者の追加で合計2枚必要になります。

要件の確認資料

上記に加えて、専任技術者の要件を満たしていることの確認書類が必要です。

具体的には「技術的要件を証する書類」として以下の書類が必要です。

・実務経験証明書
・卒業証書の写し又は卒業証明書(原本)
・国家資格等の資格を証する書面の写し又は、監理技術者資格者証の写し
・指導監督的実務経験証明書 など

また、常勤性を確認できる書類も提出が必要です。

具体的には以下の書類となります。

今回のように新規で専任技術者を採用し、常勤性を証明する書類が揃えられない場合、年金事務所に提出した「被保険者資格取得届」の写しを提出することが可能です。
被保険者資格取得届とは、厚生年金保険や健康保険への加入を必要とする人を採用する場合、年金事務所へ事業主が提出する書類のことです。

また、新たに採用する専任技術者の住所が住民票の住所と異なっている場合も注意が必要です。
例えば、住民票の住所は北海道で、大阪の会社の専任技術者になりたい場合、「本当に専任技術者として常勤しているのか?」と疑問が生じると思います。
大阪へきちんと引越ししている場合は、賃貸物件の賃貸契約書や公共料金の明細書や領収書などを提出して、常勤性を証明することが可能です。

変更届の期限

専任技術者の変更の届出は、「事実発生後14日以内の届出」とされています。
この場合、未来の日付の届出は不可となります。
5/1~の専任技術者の変更を、4/30に提出はできません。
事実が発生してから提出となりますので、注意してください。

まとめ

今回は専任技術者について解説しました。
建設業許可取得の際の重要な要件となりますので該当する人物がいない場合、資格者を採用するなどの準備が必要です。
交代する際には後任者の書類も必要ですので注意が必要です。

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