【大阪建設業】個人事業主から法人成りする際の許可引継ぎ(事業承継認可)

これまで個人事業で建設業許可を取得している事業者が法人化する場合、新たに法人としての新規の許可申請を行う必要がありました。
(併せて個人事業の建設業許可については廃業届を提出)
そのため、新しく法人としての建設業許可が下りるまでの間に建設業(契約額500万円以上(建築一式工事においては1,500万円以上))を営むことのできない空白期間が生じるという不利益が生じていました。

そこで令和2年10月1日建設業法の改正で、建設業許可に関する事業承継及び相続に関する制度が新設されました。
この改正により、個人事業主として建設業許可を取得していた事業者は、効力発生日前にあらかじめ認可を受けることで、空白期間を生じることなく、個人事業の際の建設業許可を、法人に承継することが可能になりました。

今回はその建設業許可の事業承継等に係る認可の制度について解説いたします。

建設業許可承継の認可の区分

建設業許可承継の認可は、以下の区分に分類されます。

1.事業譲渡(個人→個人)(個人→法人)(法人→個人)(法人→法人)
2.法人の合併(吸収合併)(新設合併)
3.法人の分割(吸収分割)(新設分割)
4.個人の相続

このうち、個人事業から法人化する場合の区分は1の事業譲渡(個人→法人)にあたります。

建設業者が許可に係る建設業の全部の譲渡を行う場合、譲渡人及び譲受人が、あらかじめ当該譲渡及び譲受けについて、認可を受けたときは、譲受人は、当該譲渡および譲受けの日に、譲渡人の建設業法上の建設業者としての地位を承継することができます。
ここでいう譲渡人が個人事業主、譲受人が設立する法人を指します。

事業譲渡における認可要件

認可を受けるためには、以下の要件に該当することが必要です。

①事業承継等の効力発生日前までに認可を受けること

事業承継等は、「あらかじめ」認可を受ける必要があります。
事業承継等の効力発生日は承継者及び被承継者の建設業許可有効期間内である必要があるので、許可の有効期限が切れそうな場合は注意が必要です。
※承継の事実が発生した後に遡って認可はしてもらえません。

②個人事業の建設業の全部を承継すること

個人事業主が営んでいた建設業許可の全部を、法人が承継する必要があります。
個人事業主が営んでいた許可業種の一部のみを承継することができません。
そのため、承継したくない工事業種がある場合、認可の申請前に承継したくない業種を廃業させる必要があります。

また、契約自体が有効に成立していることが要件となるため、書類の内容の適正、契約書等の当事者の記名・押印等、議事録等の参加者の資格の適正・記名・押印等も必ず確認されます。
この契約書の作成等が煩雑なのは認可申請を選ぶデメリットとも言えます。

A.営業譲渡に係る契約書(事業譲渡契約書)写し
B.法人の意思決定の確認できる書類
・法人の株主総会議事録等(写し)
・社員総会議事録(写し)
・無限責任社員又は総社員の同意書(写し)

また、この契約書にて規定される効力発生日は未到来であることが必要です。
なぜならば、事業承継は「あらかじめ」認可を受ける必要があるからです。

③個人事業主が一般(特定)建設業の許可を受けている業種について、法人が特定(一般)建設業の許可を受けていないこと

一般→特定、特定→一般など同じ業種で違う区分の許可を継承はできません。
区分が異なる場合は、認可申請前に一般・特定どちらかの許可を廃業する必要があります。
今回は法人成りする場合の手続きで法人は新設法人を想定していますので、本件は関係ありません。

大阪府知事の認可を受けることができる場合

大阪府で認可の申請ができるのは、個人事業及び新設法人の全てが大阪府知事許可業者であるもの、又は建設業を営む営業所が大阪府内にのみあるものである必要があります。
例えば、兵庫県で個人事業主として建設業許可を取得しており、大阪で法人を設立する場合は大阪府で認可の申請はできません。

許可番号の引継ぎ

個人事業主から新設する法人へ承継される場合、個人事業主の許可番号が引き継がれます。
また、複数の建設業許可業者間で承継が行われる場合は、被承継者と承継者の許可番号のどちらかを選択できます。

認可後の許可の有効期間

事業承継等の場合、許可の有効期限は事業承継等の効力発生日の翌日から5年間となります。
承継日当日も許可は有効のため、認可通知書の記載の有効期間は5年と1日になります。

認可申請の手続き

認可申請の流れは以下のようになります。

事前相談

大阪府で認可申請を検討する場合、必ず事前相談が必要です。
遅くとも事業承継等の効力発生日の2か月前を目途に相談した方がよいでしょう。
新制度ということもあり、大阪府も国土交通省に確認しながら審査手続きを進めることとなるため、通常の許可取り直しよりも審査に時間がかかることが予測されます。

認可申請書提出(受付)

事業承継等の効力発生日から30日前までに申請書を提出して受付される必要があります。
大阪府では、事業承継等の効力発生日の45日前までを目途に申請することを推奨しています。
標準処理期間は、認可申請書を受付した日から建設業者の地位の承継の認可まで、土日・祝日含む30日とされています。
年末年始は標準処理期間内に含まれませんので、注意が必要です。

手数料

認可申請については、手数料はかかりません。
通常新規で知事の建設業許可を取得する場合は9万円必要となるので、手数料がかからないのはメリットの一つです。

認可通知書の交付

大阪府の審査が完了したら、「認可通知書」が交付されます。
申請内容に重大な虚偽がある場合などは、拒否処分や取消し処分が行われる場合がありますので正しく申請しましょう。

認可申請に必要な書類

提出書類は、閲覧に供する書類と閲覧に供しない書類に分けて綴じる必要があります。

閲覧に供する書類


閲覧に供しない書類


提示書類

上記以外にも以下の書類の提示が必要です。

・承継者の常勤役員等、専任技術者などの常勤性確認書類
・常勤役員等の経営経験の確認資料
・専任技術者の確認資料
・財産的基礎の確認書類

注意点

認可申請中は、業種追加や般特新規等の申請を行うことができません。
事業承継の場合は認可後の事業承継等の効力発生日以降に業種追加や般特新規等の申請をする必要があります。

また、法人設立後も譲渡日までは個人事業で建設業を行うことになります。
譲渡日までは個人事業で常勤勤務、譲渡日から新設法人で常勤勤務というように、社会保険の移行手続きに細心の注意が必要です。

まとめ

事前認可制度は、事前相談が必要です。
大阪府の指示に従い、相談しながら進める形になります。
また、契約書の作成が必要であったりと手続きが通常より煩雑となります。

弊所では個人事業主様の法人成りに伴う認可申請をサポートしております。
法人設立の窓口から、大阪府への事前相談や書類作成、申請まで一括でサポートしております。
法人化を検討している建設業の許可業者様はお早めにご相談くださいませ。

今回は認可申請についてまとめましたが、従前通り新たに法人としての新規の許可申請を行い、個人事業の建設業許可については廃業届を提出する方法もございます。
空白期間に建設業許可が必要な規模の工事を行う予定がない場合、こちらも視野に入れるとよいでしょう。

報酬

建設業承継認可申請(法人成り):170,000円~
契約書作成:30,000円

当事務所は女性行政書士が切り盛りする行政書士事務所です。
女性ならではの柔軟性や丁寧さに加え、フットワークの軽さにも自信があります。
事務所は大阪ですが、他府県であっても出張する準備がございます。
許可の取得でお困りの際は、お気軽にお問合せくださいませ。